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我が横道を往く in 山梨③【霊岩寺】山裾にひっそりと佇む本堂、その奥に残る岩窟で…

旅行記
霊岩寺の岩窟

「展望の社 差出磯大嶽山神社」から国道140号に出たワタシは、続いて「霊岩寺」を目指す。
なぜ「霊岩寺」に行こうと思ったかというと、今回の旅の行き先をマップアプリの某先生で探していたとき、岩窟の中に石仏が並んでいる写真を見かけ、まるで神奈川県横浜市にある「田谷の洞窟」のようで惹かれたからだった。
ただ、「霊岩寺」についてはそれ以上まったく調べなかったのだが…。まあ、行けばわかるさ、ということで!

国道140号の切り通し。
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「根滝の杜」に寄り道してみると…

「展望の社 差出磯大嶽山神社」を出て、国道140号の切り通しを抜けたあたりでのこと。
目の前に白い案内板が立っていて、そこには「やまなしの文化歴史公園 根滝の杜」と記されている。
ワタシとしては「やまなしの文化歴史公園」という文言に惹かれたのだが、道の先は山があるだけで公園があるようには思えない。
それでも「二度と来ないかもしれないから」ということで、「根滝の杜」に寄ってみることにする。

国道140号沿いにあった案内板。

【根滝の杜】基本情報

根滝の杜
■住所:山梨県山梨市南1555

江戸時代の地誌「甲斐国誌」古蹟部に「根滝の杜」として記されている地域。日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の際、ここで休憩してから酒折に向かったという伝説も残っている。

緩やかな坂道を数分ほど上った先にあったのは…どこかのお宅の畑のように見えるのだが…。
道端にポツンと立っていた案内板を読んでみたところ、このあたりに日本武尊の逸話が残っているとのことだが、あまりに昔のことなので伝説の痕跡が残っているわけでもない。
そもそも、この地域のどこまでが「根滝の杜」なのかがよくわからない…。ワタシはのどかな道を歩いたなぁという気分のまま、「霊岩寺」に向かう坂道を下りていったのだった。

公園というか畑のような中に案内板が…。
「根滝の杜」の案内板。
景色に彩りを与えてくれた柿の木。
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石仏が並ぶ「霊岩寺」の岩窟の中で…

「根滝の杜」をあとにしたワタシはいったん国道140号に出て、道に沿ってそのまま南下。しばらく進んだところで、マップアプリの某先生に従って国道140号から1本山側の細い道へ入る。
道の片側には水路が勢いよく流れていたが、音といえばその水の音くらい。すぐ近くを国道が走っているのだが、車の音が聞こえてこないこともあって静かな道だった。

その後、某先生は北のほうへ曲がるよう指示。その先に「霊岩寺」があるようなのだが、見えるのは民家のみ。本当に「霊岩寺」があるのだろうか…と思いつつ北上する。

途中にあった斜面。かなり切り立っている。
道のそばを流れる水路。
この先に「霊岩寺」がある。

車がすれ違うのが難しいような細道を歩くこと1分ほど。やがて短い石段と、「霊岩寺」と刻まれた石碑が見えてくる。
さらに境内の奥にも石段があり、その先には山の斜面に貼りつくように小さな本堂が立っていた。

なお、ワタシが訪れたとき、石段の近くに車が停まっていたが、こちらはお寺の方のための駐車場かもしれないので、駐車場の有無については下記の施設情報には記さずにおく。

「霊岩寺」前の石碑と石段。

【霊岩寺】基本情報

福聚山 霊岩寺
■住所:山梨県山梨市万力2231
■宗派:曹洞宗
■本尊:聖観世音菩薩
■電話:0553-22-0988

ご本尊の聖観音。本堂の前に鎮座している。
本堂前の石段のそばにある小さな石碑。

秩父札所34観音霊場を模した秩夫横道三十四観音霊場の第18番札所。本堂の奥には聖観世音菩薩と66体の脇仏が祀られた岩窟があり、2月になると山梨市で最も早く春を告げる祭り「万力穴観音祭」が催される。この祭りでは五穀豊穣や無病息災を祈願して、玄奘三蔵が般若経典をまとめ上げた600巻にも及ぶ膨大な経典「大般若波羅蜜多経」を10人の僧侶が一斉に転読。経典をパラパラと宙に舞わせながら経を唱える際に起こる風に当たると、その年は無病息災だといわれている。

細道の先にあった石段を上ったところにお地蔵さまが立っていて、その背後にはワンコの入ったケージがあった。
ワタシが石段を上ったときはワンコに吠えられてしまったが、軽く会釈して手を振ると、以後はぴたりと吠えなくなった。けっこう人懐こいワンコなのかもしれない。
本堂の前の境内に向かって左側に庫裏があり、その前にはちょっとしたベンチも置かれていた。こぢんまりとした境内だが、きちんと手入れがされていて、ほっとするような空間だった。

石段の上のお地蔵さまとワンコ。

境内を抜けると再び石段があり、その上に本堂が立っている。
本堂の入り口に扉はなく、中を覗いてみると建物の奥がそのまま山の斜面に接していて、賽銭箱の向こうに格子戸があった。あとで調べたところによると、格子戸の奥は岩窟で穴観音が祀られており、この中で「万力穴観音祭」が催されるようだ。このような構造のお寺をワタシは今まで見たことがない。
ただ、ワタシがお参りしたときは庫裏に誰かがいる様子がなく、お寺の方に許可を得ることができなかった。そのため格子戸を開けるのは控え、格子戸の前で手を合わせる。

本堂前の石段はちょっと急だ。
本堂の奥の格子戸。左側に岩窟の入り口が。
本堂のそばに並んでいる石仏。

お参りのときに気になっていたのが、格子戸に向かって左側にある穴だ。高さは1.5mほどで、奥を覗くと壁に並んだ石仏が見える。
どうやら、この奥にマップアプリの某先生で見かけた岩窟があるようだ。特に立ち入り禁止の柵などはなかったので、ワタシはお参りをさせていただくことにする。

中に入ったワタシは驚いた。岩窟の中はワタシがまっすぐ立てたので、高さは1.8mほどはあるだろう。

格子戸の左側にある岩窟の入り口。

岩窟の正面と左側には一定の高さで溝が掘られ、溝に高さ20~30cmほどの石仏がズラリと並んでいる。
こちらの岩窟自体も明らかに四角い形をしていて、人の手が加わっていることをうかがわせたが、まっすぐに掘られた壁の溝はそれよりもはっきりと人の意図を感じさせるものだった。

こちらのお寺は秩夫横道三十四観音霊場の札所とのことだが、かつては甲府市や山梨市、笛吹市や甲州市に秩父札所34観音霊場を模した札所が点在していたという。
ただ、現在は廃寺になったり、所在が不明であったりする札所もあるため、霊場として訪れる人はいないとのことだ。

また、「霊岩寺」の北に位置する山梨市牧丘町隼には隼遺跡があり、こちらでは山岳信仰の修行や祭祀などが行われていた可能性が高いという。「霊岩寺」も隼遺跡のような修行場だったのかもしれない。

正面に設えられた小さな祭壇と、その周囲に並ぶたくさんの石仏。苔むした岩壁や天井…。
岩窟の中に立っていると、これまで重ねてきた月日をそのまま目の前にしているような気分に捉われた。
この中で人々は何を思い、何を願ってきたのか…。それは今となってはわからない。それでも、こちらの岩窟に残る人々の思いが伝わってくるような気がして、祭壇の前で静かに手を合わせた。

「霊岩寺」は本当に小さなお寺で、御朱印をいだたけるようだが、普段訪れるのは檀家の方々くらいかもしれない。
ワタシはマップアプリの某先生にあった数枚の写真だけを見て、直感的に「霊岩寺」を訪れることを決めた。そして、その直感は間違っていなかったと実感した。

「霊岩寺」をお参りできてよかった。
お寺を背にしながら道を歩いているとき、強くそう思った。

「霊岩寺」の南側に残る六地蔵と庚申塔。くるまやラーメン万力店の裏あたりにあり。

「我が横道を往く in 山梨」一覧

①【法蔵寺】延命地蔵尊とともに刻みつづける悠久の歴史
②【展望の社 差出磯大嶽山神社】時の流れを感じさせる景勝地

③【霊岩寺】山裾にひっそりと佇む本堂、その奥に残る岩窟で…
④【食事処みはらし】

(お出かけ日:2025年12月14日~12月15日)
※各情報は2025年12月時点のものです。

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