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我が横道を往く in 山梨⑤【稲子沢】7年の月日を感じさせる景色の変化

旅行記
稲子沢周辺の景色

この日泊まる予定だった「一之橋館」は、実は2018年に一度お世話になったことがある。
もう7年も前になるが、そのときに「一之橋館」だけでなく、お宿のある稲子沢もワタシの中に深い印象を残した。そういった経緯もあって今回の一人旅を計画したとき、宿泊先の「一之橋館」は真っ先に決定。もちろん、稲子沢を散策する気も満々だった。

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まずは笛吹川西岸の下荻原を散策

「食事処みはらし」での昼食を終えたワタシは山梨市駅へ。歩いて10分もかからず、13時30分頃には山梨市駅に到着する。
「一之橋館」のある西沢渓谷方面へ向かうバスが山梨市駅を通過するのは13時50分。駅前のバス停に着いたワタシは、改めて近くのコンビニで夜に1人飲みするときのお酒を購入。バスがやってくる15分前にはバス停で待機していた。

なぜ、これほど用心深い行動を取ったのかというと、単純に西沢渓谷方面へ向かう山梨市営バスの本数が少なく、乗り遅れるととんでもないことになるからだ。
もともと予算を抑え気味にした一人旅だけに、タクシーを使う気はまったくない。ならば予定したバスに必ず乗る、というわけだ。

ワタシがバス停で待っているとき、周りにいたのはおじいちゃん1人だけ。お客さんの少ないバスに乗って、山奥にあるお宿に向かう…なんだかテンションが上がってきたぞ!

バスの時刻表。本数がかなり少ない。
西沢渓谷へ向かうバスは時刻どおり到着。

山梨市駅から「一之橋館」の近くにある「一之橋」までは25分ほど。おじいちゃんは途中で降りてしまい、車内の乗客はいよいよワタシ1人に。
バスは国道140号をまっすぐ進むかと思いきや、ところどころで脇道に入る。どうやら国道140号沿いにある集落の中を通るようだ。
道によってはかなり細いところもあったが、さすがに運転手さんは慣れているようで、脇に車が停めてあってもスイスイと通り抜けていた。

やがてバスはワタシが降車する「一之橋」のバス停に到着。
バス停のある国道140号はときどき車が走り抜けていくものの、人はまったく歩いていない。そんな中に取り残されたので、さすがに少し寂しくなってしまった。

このとき14時15分頃で、チェックイン予定の15時までかなり余裕がある。
そこでワタシは笛吹川を挟んで稲子沢の対岸にある下荻原を少し歩いてみることに。

ああ、バスが去っていく…。
右の坂を下りると一之橋がある。
バス停の向かいには「一之橋館」の看板も。

笛吹川に架かる一之橋を渡らず、川の西岸をそのまま北上してみると、道の両側に木がうっそうと茂る中にいきなり石碑と廃屋が。この廃屋がかなりのボロさで、先制パンチを食らった気分だった。

これからどんなところに連れていかれるのか…そんな不安も少々よぎったが、北に進むにつれて民家をちらほら見かけるようになり、ほっとひと安心。むしろ、国道140号と笛吹川に挟まれた下荻原は意外と家が多い印象だった。

下荻原の景色。

笛吹川沿いの道を歩いていると、川原に向かって下りられる道がいくつかあった。
道は枯れ葉で埋もれた感じだったが、ワタシはティンバーランドのブーツを履いていたので、ためらうことなく下ってみる。
こちらの川原は誰もおらず、ぼーっと川面を眺めているだけでゆったりとした気分になった。

笛吹川への小道①。
このあたりの川の流れは緩やか。
川原にはこんな巨岩も。
笛吹川への小道②。
流れが急なところもあった。
この小道はさすがに下れず…。

また、川沿いの道にはところどころに古い石碑も立っていて、ちょっとした歴史と自然を楽しめる散歩道といった風情だった。近くには「山王神社」、ずっと北に行けば「大嶽山那賀都神社」があり、もしかしたらこちらは巡礼者が行き来する道としてかつては栄えていたのかもしれない。

「那賀都」と刻まれた、一之橋近くの石碑。
馬込橋近くの庚申塔。
馬頭観音。こちらも馬込橋近くにあり。

馬込橋まで来たところでワタシは橋を渡り、対岸の馬込へ。そのまま笛吹川の東側を南下すれば、もともとの目的地である稲子沢へ抜けられると考えたわけだ。

こちらが馬込橋。
片側1車線と橋の幅は広い。
馬込橋から見た笛吹川。

馬込のほうまで来ると、民家の数はめっきりと減ってくる。
このあたりは初めて歩くので少々不安を覚えるが、あるお宅の入り口で二十三夜塔を見かけ、ちょっと安堵する。

二十三夜塔は旧暦23日の月待の記念として、信仰者の集まりである二十三夜講中によって立てられたものだ。また、特定の月齢の夜に人々が集まって飲食などをしながら月の出を待つ行事のことを月待講という。
ただ、この時点でワタシは二十三夜塔や月待講自体を知らず、「なんか珍しい石碑だなぁ」と眺めていた。

馬込の道をしばらく進んでいると、やがて目の前に「通行止め」の看板が…なにっ、「通行止め」!?
この看板の先がどうなっているのかはよく見えないが、道が崩れでもしていたら大変だ。そこでワタシは仕方なく馬込橋を渡り、一之橋まで渋々戻って、改めて稲子沢を目指すのだった。 

途中、民家の前で見かけた二十三夜塔。
馬込の通行止め区域内にある馬頭観音(2016年に撮影)。
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7年を経て大きく変わっていた稲子沢

一之橋を渡ると東袂に「一之橋館」の入り口があり、そのあたりから稲子沢に入る。
稲子沢には特にこれといったものはない。しかし、7年前に訪れたとき、なんとものどかな集落の雰囲気に思わず心が和み、その景色をワタシはずっと覚えていた。あの風景は昔のままかなぁ…。

左にあるのが「一之橋館」から見た一之橋。
橋の幅は馬込橋と比べると少々狭い。
一之橋から見た「一之橋館」と笛吹川。

「一之橋館」の前を過ぎると道は左右に分かれ、左側が稲子沢となっていて、しばらく進むと「大神宮」が見えてくる。「ああ、そうだそうだ」と昔を思い出しながら、ワタシは「大神宮」に近づいていった。

【大神宮】基本情報

大神宮
■住所:山梨県山梨市三富上柚木
 881

 ※名称はマップアプリを参考に
  しています

…以前とは何かが違う。拝殿の周囲や前の石段に落ち葉が積もり、どこか寂れたような雰囲気なのだ。
前回は春、今回は冬と季節は違うが、それだけでこれほど印象が変わるものなのか…。消化しきれないものを胸に抱えながら、ワタシは民家が点在するほうへと向かった。

民家が見えるあたりまで来たとき、自分の中にあった違和感がはっきりしたものとなった。
7年前にはなかったコンクリートの擁壁が道沿いに続いているのだ。それに道と笛吹川の間にある畑地もあまり人の手が入っていないように見える。

稲子沢の民家があるあたり。
笛吹川沿いの畑。

7年間でこんなに変わるものなのか…この変化を自分の中で消化するまで、数秒ながらも時間がかかってしまった。

2018年4月の稲子沢の景色

7年前、ワタシが稲子沢の景色を何気なく撮影していた。その写真をこちらに残しておく。

流れる煙から感じられた人々の生活

のちほど「一之橋館」のおかみさんに伺ったところによると、稲子沢に現在住んでいる方々は10人に満たないのだとか。最近は子どもの声を聞くこともなく、「大神宮」のお祭りのときは住民が少ないので幟を立てるのも大変とのお話だった。

翌15日。ワタシは散策の前に稲子沢へ立ち寄る。
この日の朝はどちらかのお宅で何かを燃やしているようで、笛吹川に向かって煙が流れていた。
この何気ない景色にワタシは人の息吹を感じ、ちょっと慰められた気分を胸に秘めて散策へ向かうのだった。

稲子沢の擁壁。
稲子沢を漂うたき火(?)の煙。

「我が横道を往く in 山梨」一覧

①【法蔵寺】延命地蔵尊とともに刻みつづける悠久の歴史
②【展望の社 差出磯大嶽山神社】時の流れを感じさせる景勝地

③【霊岩寺】山裾にひっそりと佇む本堂、その奥に残る岩窟で…
④【食事処みはらし】懐かしい雰囲気の食堂で昼食を
⑤【稲子沢】7年の月日を感じさせる景色の変化

(お出かけ日:2025年12月14日~12月15日)
※各情報は2025年12月時点のものです。

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