詳しいことは忘れてしまったが、2018年の一人旅の際にワタシが宿屋を選ぶ指針にしていたのは「1万円くらいで泊まれて、のんびりできそうなところ」だったと思う。この条件にぴったりと合ったのが「一之橋館」だった。
それから7年。宿泊費もお宿の雰囲気もあまり変わっていないようなので、今回の一人旅でもワタシは「一之橋館」にお世話になることを決める。
おばあちゃんちを訪れたような気分に浸れる「一之橋館」
稲子沢の散策を終えたのが15時前。このあたりを歩いているときに一之橋の東袂にある「一之橋館」の前も通っているのだが、少しは気分を出そうと改めて一之橋の西袂へ。一之橋を渡っていろいろ写真を撮りながらお宿に入ろうというわけだ。
「一之橋館」の入り口は一之橋を渡ってすぐのところにある。道路から見ると左側に新館(別館)があり、その奥に本館という配置だ。「一之橋館」を目にしたときの印象は「変わってないなぁ」だった。
正直なところ、「一之橋館」の本館はけっこう古い。新館もパッと見は新しい感じがするものの、よく見ると少しずつ古びてきている部分もある。しかし、これこそワタシが惹かれた「一之橋館」だ。
お宿の玄関まで来てみると、そちらには歓迎看板が置かれていて、ワタシの名前だけが記されていた。
前回お世話になったときは気づかなかったのだが、かつては玄関横に売店があったようだ。ただし、今は営業していない。
【一之橋館】基本情報
一之橋館
■住所:山梨県山梨市三富上柚木
883
■宿泊費:
1泊2食つき 1人 10,600円~
※税込価格 ※旅行サイト調べ
■部屋数:和室10室
■温泉:あり
■駐車場:あり
■電話:0553-39-2331
土間に立つと、一気に「懐かしいなぁ…」という感慨に捉われる。
もちろん7年前と変わらないなぁという思いもあったが、「一之橋館」の玄関には「昔よく行った田舎のおばあちゃんち」のような雰囲気も漂っていたからだ。
フロントには誰もいなかったので、土間から「こんにちは~」と声をかけると、「は~い」という返事とともにおかみさんが姿を見せる。おかみさんも昔のままだし、元気そうでよかった。
こちらには旦那さんもいらっしゃるようだが表に出てくることはなく、7年前もちらっと見かけたくらい。基本的には、おかみさんが中心になってお宿を切り盛りしているようだ。
チェックインの際、7年前にお世話になったことを伝えると、「それはそれは」とおかみさん。この会話でむしろワタシの緊張が解けたような感じだった。
ここで絶対に気になるのがフロント近くに並んでいる「柚木窯」の陶器、桃のシロップ漬け、プラムのジャムなどだ。前回はこちらで桃のシロップ漬けを買った記憶があり、けっこうおいしかった。
ただ、シロップ漬けやジャムなどはいつ作ったのか謎なので、チェックアウトの際に伺うことにする。
ちなみに、「柚木窯」とは「一之橋館」の近くにある窯で、山梨特産の果物の木や木灰を使って陶器を焼いているのだとか。他に陶芸教室も開催しているそうだ。
窓を開けると真下に笛吹川の流れが
今回、ワタシが案内されたのは本館の「笛吹の間」。前回は隣の「せせらぎ」に泊まったが、本館にあるのはこちらの2間。「笛吹の間」「せせらぎ」ともに旅館の和室といった趣きで落ち着く。また、「笛吹の間」は改装したばかりなのか、畳や壁紙など内装がきれいだった。
ただ、冷蔵庫は節電のためかプラグがコンセントに差さっておらず、しばらく使っていない様子だった。そのため、山梨市駅前で購入したお酒は窓の手すりに置いて冷やすことにする。
なお、部屋の出入り口の引き戸には鍵がなく、代わりに内部にはスライドボルトが設置されている。今夜の宿泊客がワタシだけなのはわかっていたので、ワタシは使わなかったが。
部屋に落ち着いたところで、「笛吹の間」まで案内してくれたおかみさんがお茶を注ぎ、お茶請けを出してくれる。こういうちょっとした心遣いがうれしい。
ちなみに、お茶請けの最中の袋が開いているように見えるのは、ワタシが袋を開けた瞬間に写真を撮り忘れたことに気づいたからだ。
そこで少しでも元の形に近づけて写真を撮影したのだが…ワタシがいかに食いしん坊かがわかる事例でもある。
部屋の窓を開けると、真下を流れている笛吹川が目に入る。窓がけっこう高いところにあるので、見下ろすとかなりの迫力! このあたりは落差があるのか、川音もなかなか激しい。ただし、窓を閉めるとちょっと大きな空調設備の音といった程度なので、あまり気にならなかった。
何度も浸かって一之橋温泉を楽しむ
ちょっとひと休みしたあと、館内の散策も兼ねてさっそく温泉へ。
ちなみに、「一之橋館」の本館はトイレや洗面所は共用。男性用トイレの一部は最近改装したようで、きれいになっていた。
「一之橋館」の本館はもともとあった建物に他の建物を増築してつなげたような形のためか、ちょっと不思議な構造になっている。あとから増築した建物に浴場や客室の「笛吹の間」「せせらぎ」が固まっている感じだ。
そして特徴的なのが鉄の階段で、こちらの武骨な階段を下りたところに浴場のほか、生活感あふれる休憩スペースがある。
この休憩スペースの雰囲気がまた「田舎のおばあちゃんち」っぽくて、いい味を出していた。
浴場の暖簾をくぐると脱衣所がある。3~4人入るといっぱいになるくらいの広さだ。
ちなみに、綿棒やかみそり、バスタオルなどはこちらに用意されている。
こちらの一之橋温泉は水分が体に吸収されやすく、湯あたりしづらい単純温泉だ。自然湧出時の泉温は26.5℃で、加熱と循環を行っている。
湯の温度は熱くもなく、ぬるくもない。個人的にはしばらく浸かったら、いったん湯船を出て足だけ湯に浸けながら体を冷まし、涼しくなったらまた湯に浸かる…それを何度も繰り返すのに、ちょうどいい湯の温度だった。
なお、こちらは日帰り温泉としても利用できるようで、ワタシが脱衣所から出ようとしたタイミングで2人の若者が入ってきていた。
ワイン豚の鍋をはじめとした夕食に大満足!
温泉に浸かったあとは時間があったので、ここまでのことを持参した日記に書く。
18時ちょっと前になるとおかみさんから連絡が入り、1階の広間に移動してお楽しみの夕食タイム!
ただ、今回は一人旅ということで、食事が用意された部屋がやけに広く感じられる。
普段のワタシはテレビをほとんど観ないのだが、このときはさすがにテレビを流しながら食事を摂った。
一方で、テーブルにずらりと並んだ夕食は豪勢そのもの!
山の幸を中心にしたメニューで、お造りの馬刺しや川魚の塩焼きなど、山梨ならではの料理もある。
いくつかある小鉢の中でも白和えがまさに「おばあちゃんの味」といった風情で、個人的には懐かしくもおいしくいただいた。こういう一品は箸休めにちょうどいい。
また、野菜はこちらで栽培しているものを使っているようだ。
中でも「おいしいなぁ」と感じたのがワイン豚の鍋。ワイン豚とは専用のワインを飲ませて育てた、ぶどうの産地である山梨ならではの食材だ。
ワイン豚はほんのりとした柔らかい甘みがあり、まったくクセがない。玉子につけていただいてもいいし、ごはんにもぴったりだった。
他に茶碗3杯ぶんほどのごはんが用意されていたが、このご時世、ごはんを残すのはためらわれる。ワタシは頑張ってごはんもすべていただいたが、さすがにお腹いっぱい。食後は1時間ほど動けなかった。
とはいえ、旅館ならではの料理からおばあちゃんの味まで、さまざまなメニューを堪能できて大満足。ごちそうさまでした!
またいつか山あいの小さなお宿に行きたい
食後はゴロゴロしたあと、20時頃に再び温泉へ。
しっかり温まったあとは日記を書いたり、稲子沢のことを調べたりしながらダラダラする。
このとき、稲子沢にまつわる不思議な話を見つけて、オカルト好きなワタシは思わず読んでしまう。
外は真っ暗で、館内は川音以外に聞こえてくる音もない。1人のワタシはさすがに怖くなってしまい、スマホのラジオをつけ、電灯もつけっぱなしにして寝るのだった…。
翌朝は7時30分に起床。8時に1階の広間で朝食を摂る。
朝食は夕食ほどではないが、やっぱりボリューム満点。ワタシとしてはナスのおひたしとナメコのお味噌汁が特によかった。



朝食後はちょっと休んだあとで最後の温泉。9時30分頃にチェックアウトする。
その際、おかみさんから稲子沢の今についてのお話を伺う。また、昨日から気になっていた桃のシロップ漬けについても尋ねると、1年前に漬けたものなのだとか。
本来は販売用だが「食べられるかわかりませんけど、もしよかったら…」というお言葉に甘えて、今回に限り1瓶いただく。ありがとうございます!
「一之橋館」は建物が古いが、温泉はいいし食事もたっぷり。
こちらでは1泊数万円もかかるお宿のような贅沢はできない。しかし、静かな山あいでゆったりとした時間を確実に過ごせる。ぼーっとして、たまに温泉に浸かる…こんな贅沢、なかなかできない。
ワタシはまたいつか「一之橋館」に来るつもりだ。コロナ禍も切り抜けたのだし、「一之橋館」には末永く続いてほしいと思っている。
「我が横道を往く in 山梨」一覧
①【法蔵寺】延命地蔵尊とともに刻みつづける悠久の歴史
②【展望の社 差出磯大嶽山神社】時の流れを感じさせる景勝地
③【霊岩寺】山裾にひっそりと佇む本堂、その奥に残る岩窟で…
④【食事処みはらし】懐かしい雰囲気の食堂で昼食を
⑤【稲子沢】7年の月日を感じさせる景色の変化
⑥【一之橋館】懐かしい「おばあちゃんち」でのんびりとした時間を
(お出かけ日:2025年12月14日~12月15日)
※敬称略させていただきます。
※各情報は2026年1月時点のものです。



















































