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秩父札所14番【今宮坊】今宮神社の別当だった頃の面影が残る町中の寺院

秩父札所巡り
今宮坊
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【今宮坊】基本情報

長岳山 今宮坊
■住所:埼玉県秩父市中町25-12
■宗派:臨済宗南禅寺派
■本尊:聖観世音菩薩
■駐車場:あり
■電話:0494-22-4772
【御朱印受付 基本情報】
■受付時間:8:00~17:00
 ※11月~2月は16:00まで
 ※12:00~12:30は昼休憩
■定休日:なし
■御朱印料:500円
 ※2巡目以降は200円

平安時代の開創といわれる寺院。本来は長岳山正覚院金剛寺といい、修験道の本山として知られる京都・聖護院の直末の道場だった。当時、観音堂は八大権現社(現在の今宮神社)に祀られ、今宮坊は神社の別当として観音堂と神社を管理。長暦3年(1039)にはすでに3間(約5.5m)四面の堂宇があり、この地を訪れた弘法大師が彫刻した観音像が安置されていたという。戦国時代には秩父に侵攻してきた武田信玄の軍に焼き払われ、現在の3間(約5.5m)四面で方形造りの観音堂は江戸時代の宝永6年(1709)に再建。この頃には秩父における修験道の中心となっていた。しかし、明治維新後の神仏分離令や修験道禁止令の影響で今宮神社とは分断されて現在に至る。本尊の聖観世音菩薩は江戸初期の作で、像の高さは57cm。聖観音としては珍しい半跏趺坐像はんかふざぞうで、他にも今宮坊では藤原時代後期の作といわれる飛天像を蔵している。

Kとの秩父札所巡りで28番目に訪れたお寺。
国道299号から埼玉県道73号 秩父上名栗線に入り、しばらく南下。
「秩父童子」という石像が立っている交差点があるので、そこを西へ曲がった先に「今宮坊」はある。
その際、「今宮神社」のすぐそばを通ることになるが、実はかつて「今宮坊」と「今宮神社」はひとつの境内にあった。
住宅が立ち並んでいる今の様子からは想像できないが、かつての「今宮神社」の境内はかなりの広さを誇っていたことがうかがえる。

500年にもわたって「今宮坊」を見守りつづけたケヤキ

「今宮坊」の駐車場は路地を挟んで境内の北側、すぐそばに納経所が見えるところにある。駐車場から出ると大きなケヤキが見えるので、これを目印にして「今宮坊」に向かおう。
周囲には民家がけっこう密集しているものの、その中で葉を茂らせたケヤキの存在感は抜群。
そのずっと先に「今宮神社」があるのだが、かつてはそこまで境内だったと思うと、いかに境内が広かったかが実感できるはずだ。

ケヤキのそびえる角を曲がると、すぐ目の前に「今宮坊」の観音堂が姿を現す。
こぢんまりとした観音堂は、これまたちんまりとした境内にひっそりと佇んでいて、町の景色に溶け込んでいる印象だ。

境内のケヤキはなんと樹齢が500年なのだとか。
このケヤキはかなりの大きさで、境内からだと全体像をなかなかつかみづらいほど。
その根元には聖徳太子像が鎮座している。

観音堂の横から見たケヤキ。
ケヤキの根元の聖徳太子像。

「今宮坊」は観音堂のそばに手水舎や納経所がぎゅっとまとまっているので、お参りはあまり時間はかからない。ワタシたちも境内の散策を含めても、滞在時間は30分ほどだった。

観音堂に向かい合って立つ手水舎。
観音堂の向かって右側にある納経所。
「今宮坊」の御朱印。

秩父札所で唯一の輪廻塔があり

「観音霊験記」による縁起によると、かつて武田信玄の家臣に観音菩薩の信仰が厚い石原宮内という家臣がいたという。
時田合戦の際、宮内が采配を間違え、信玄が宮内の失敗を埋め合わせることで勝利に導いた。これを不服に思った宮内が信玄について負け惜しみをこぼしたところ、それが信玄の耳に届いてしまい、主君を中傷したということで死罪を命じられてしまう。
すると処刑の前夜、信玄の夢枕に観音菩薩が出現。宮内の助命を懇願したため、信玄はお告げを信じて宮内を許し、側近として取り立てたという。

それにしても、この絵は…信玄というよりも、個人的には天草四郎かと思ってしまった。えらく若い印象だし…。

「観音霊験記」の扁額。

境内には勢至菩薩堂のほか、子どもの無病息災を願って奉納された延命地蔵尊や、無縁仏となった埋葬者の墓を集めて供養している無縁塔が点在している。

阿弥陀如来の脇侍である勢至菩薩のお堂の前には、神社を守護する狛犬が鎮座している。これは「今宮坊」が「今宮神社」の別当だった頃の名残なのかもしれない。

観音堂の横に立つ勢至菩薩堂。
手水舎の近くに祀られた延命地蔵尊。
観音堂の裏あたりに佇む無縁塔。

また、観音堂の傍らには、秩父で唯一の輪廻塔がある。
これは後生車とも呼ばれ、経文が刻まれた円盤が石柱に取りつけられている。

この円盤を生者が回すと幸せが約束され、亡者が回すと地獄から浄土に生まれ変わることができるのだとか。
輪廻塔は現在は新しいものになっている。どうやら最近になって作りなおされたようだ。

「今宮坊」は小さいながらも、江戸時代に建てられた観音堂や樹齢500年のケヤキなど、歴史を感じさせる趣きがある。
境内に置かれたベンチに腰かけながら、のんびりと歴史に思いを馳せてみるのもよさそうだ。

観音堂の片隅に置かれた石。
こちらが観音堂のそばの輪廻塔。

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(お出かけ日:2025年5月6日)
※各情報は2025年6月時点のものです。

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