12月15日。この日は「廣蔵院」~「栖雲寺」と回ることは決めていたが、あとは「慈雲寺」に行って最後はJR中央本線・塩山駅の近くにある「菅田天神社」で締めよう、かなぁ…と、計画とも言えないような計画をなんとなく立てていた。
時間は9時30分頃とそこそこ早いし、土地鑑がまったくないわけでもないので、マップアプリの某先生を使って「廣蔵院」を目指しつつ、ワタシは寄り道する気満々で歩きはじめ…。
稲子沢に別れの挨拶を
某先生で「廣蔵院」の周辺を見ていたとき、ワタシは「宝樹院」というお寺を見つける。
ただ、こちらのお寺の情報が住所と擁壁の写真1枚しかない。普通だったら行くのがためらわれるところだが、「実際はどうなってるんだ? こりゃ確認しないとな」となってしまうのがワタシである。
稲子沢の「大神宮」のあたりを軽く散策したあと、ワタシは某先生が案内する笛吹川沿いではなく、斜面を上っていく道を選ぶ。理由は「なんとなく…」だ。
ちょっとした上り坂をしばらく歩いていると、寺井という集落の案内板を見つける。ふと振り返ると、お世話になった「一之橋館」のある稲子沢が、山の斜面の向こうに隠れようしているところだった。
このとき、ワタシの中で稲子沢に対する愛おしさがなぜかこみ上げてくる。
周りには誰もいない。ワタシは稲子沢に向かって軽く手を上げ、「じゃあ、またね」とつぶやいていた。
「宝樹院」の現状に愕然…
寺井から「宝樹院」のある塩原周辺までは山の斜面にある道を進み、やがて杉林の中へ入っていく。
かなり細い道であまり使われているように見えないが、道の周囲は荒れ放題といった雰囲気ではなく、ときおり地元の方が通っているようだ。
塩原あたりは山を下ったところにあるせいか、寺井に比べると民家の数がけっこう多かった。
山梨県道213号 下荻原三日市場線に入り、しばらく歩くと案内板が見えてくる。
どうやらこちらが「宝樹院」のようだ。案内板がやけに錆びているのが気になりつつも、お寺に続く道を上ってみると…。
【宝樹院】基本情報
光明山 宝樹院
■住所:山梨県山梨市三富上柚木
220
■宗派:天台宗
■本尊:阿弥陀如来

…無住になって長いのだろう。「宝樹院」は写真のとおりだった。
本堂を前にしたとき、ワタシは言葉がなかった。ご本尊の木造阿弥陀如来立像は市指定有形文化財とのことだが、ご本尊がどちらかでしっかりと管理されていることを祈りつつ、ワタシは本堂の前でそっと手を合わせた。
軽くショックを受けたワタシは、今日お参りするお寺や神社は「宝樹院」のような状態の可能性もあるだろうなぁ…という不安を微かに覚えつつも「廣蔵院」へ。
マップアプリの某先生を見ると途中に「天満宮」があったので、せっかくなのでこちらもお詣りしていくことにする。
【天満宮】基本情報
天満宮
■住所:山梨県山梨市三富上柚木
■主祭神:菅原道真
※名称はマップアプリを参考に
しています

こちらの「天満宮」は民家の点在する中に、鎮守の森を背にして立っている。
拝殿や鳥居は古びているが、境内はきれいだし、拝殿も人の手が入っていると感じられる。南を向いた拝殿には日差しが降り注いで境内が暖かったこともあり、ワタシはちょっとほっとしながらお詣りした。
お詣りをすませて境内を出たところで、近くの民家の庭から小さな獣が出てきてワタシの前を通り過ぎていく。最初はネコかと思ったが、それにしてはちょっと大きい。
ありゃなんだ、と思いながら見守っていると、お尻が異様に赤い。もしかしてサルなんじゃ…と思い、写真を撮ろうとしたが、ワタシがスマホのカメラを用意する前にサルは茂みの中へ悠々と消えてしまった。
「廣蔵院」に残る「自然に対する畏怖」
「天満宮」でお詣りしたあと、ワタシは神社のすぐ北側にある天神橋で笛吹川を渡る。このあたりは川幅が狭くなっているせいか、笛吹川の流れはかなり激しかった。
国道140号に出たら、あとは塩山方面に向かって南下するだけだ。
国道140号を歩いていると、さすがに車を見かけるようになるが、歩行者の姿はなし。
もうすぐ「廣蔵院」というところまで来たとき、国道沿いの大きな擁壁の上に柵が設置され、ちょっとした坂道になっていることに気づく。子どもの頃、よく高いところに登って遊んでいたワタシはためらうことなく坂道を上っていった。
「廣蔵院」をお参りをしたあとで帰る際に気づいたのだが、国道沿いにお寺の駐車場があり、その向かいに軽自動車がギリギリ通れるくらいの狭い坂道が続いている。途中には境内に出られる石段もあり、本来はこちらが参道とされているようだ。
坂道は途中で大きく「く」の字に曲がっていて、どうやらその先に「廣蔵院」があるようだ。
ただ、坂を上った先の景色はまるでどこかのお宅の庭のよう。さすがに入るのがためらわれ、坂が「く」の字に曲がっているところまでいったん戻り、マップアプリの某先生で道を確認する。
しかし、某先生の指示は「まもなく目的地です」。「ほんとかよ」と思いつつも坂道を上り、ご住職の住まいと思しき民家の横を通り過ぎると、その奥に「廣蔵院」の本堂があった。
【廣蔵院】基本情報
成澤山 廣蔵院
■住所:山梨県山梨市牧丘町成沢
1298
■宗派:曹洞宗
■本尊:釈迦牟尼仏
■駐車場:あり
■電話:0553-35-2844

なんとも生活感あふれる境内だなぁ…と思いながら、ワタシは本堂の前に立ってお参り。
境内は狭いながらも手入れがされているが、本堂の前に洗濯物が干してあるため、お寺の境内というよりも農家の庭先といった風情だ。
もともとワタシが「廣蔵院」に興味を抱いたのは、岩の上にたくさんのお地蔵さまが並んでいる写真を某先生で見かけたから。ただし、あとで考えてみると、こちらのお地蔵さまには風車が添えられており、明らかに水子地蔵だった。他にも何やら巨石が収まった写真があったが、むしろ謎が深まるばかりだった。
閑話休題。
この段階で、ワタシが惹かれたお地蔵さまが水子地蔵だという認識はなく、「あのお地蔵さまはどこだろう」と境内を散策。
墓地にそれらしきお地蔵さまが見えたので行ってみて、そこで初めて水子地蔵だと気づく。岩の上に大きなお地蔵さまが立ち、その周りに風車が添えられた小さなお地蔵さまが並ぶさまは、さすがに写真に収める気が起こらない。ワタシはお参りだけして、その場を立ち去った。
このとき、水子地蔵の近くに古びた石段があるのを発見。石段の左右は茂みに覆われていて、その先は見通せない。ただ、立ち入り禁止の看板があるわけでもない。もし、この先も墓地だったら引き返そう…そう思いながら、ワタシは石段を上っていった。
石段をしばらく上ると、墓石の向こうの斜面に苔に覆われた大きな岩がいくつも転がっているのが見えてきた。
さらに、その上には突き出ているような巨岩まであり、石段はその中のほうまで続いている。
ワタシは一瞬、「…えっ!?」と思ってしまった。山梨県内には「昇仙峡」をはじめ、山肌がむき出しになっているところがあるし、そういった景色を何度も見てきた。ただし、こちらのように微妙な均衡を保ったままの巨岩を間近で見るのは初めてだった。
驚きを胸に抱えたまま、ワタシは石段を上って突き出た巨岩の下にたどり着く。
巨岩の下はちょっとした岩屋のようになっていて、そちらには小さな祠を中心として、やはり小さな石仏がたくさん並んでいた。
…なんという光景だろう。巨岩は見る角度によって表情を変える。そして、どの角度から見ても驚きがどんどんあふれ出てくる。こんなに素直に驚くのは久しぶりだ。
うまく表現できないが、「霊岩寺」の岩窟には今も人々の思いが残っているように感じた。一方、こちらの「廣蔵院」では、巨岩の下に祠を立てた人々の思いが何から生まれたものかははっきりとわかった。それは「自然に対する畏怖」だ。ワタシ自身、こんな感情を抱いたのは、今回の「廣蔵院」と秩父札所31番「観音院」だけだ。

景色に圧倒され、ちょっとクラッとしたような心持ちのまま、ワタシは巨岩の下の祠に合掌。
結局、ワタシがお参りしている間にお寺の方々や参拝者を見かけることはなかった。
「廣蔵院」でお参りしたあと、ワタシはちょっとした高揚感に包まれていた。
このとき、心の中にあったのは「残しておきたい」という純粋な気持ちだ。そして、それはブログを続ける理由に直結する。ブロブを始めて約1年半、その方向性がやっと言語化できた気がした。
ちなみに今回、この記事を書くために「廣蔵院」について調べたが、観光サイトも含めてほとんど情報を見つけられなかった。マップアプリの某先生に掲載されいている写真も、ストリートビューのものを含めて3枚しかない(2026年1月時点)。
これほど情報が少ない理由はわからない。ただ、「廣蔵院」は本当に静かなお寺なので、もし訪れる機会があったらご住職や檀家の方々の日常を邪魔しないよう、そっとお参りさせていただくようにしよう。
【稲子沢~廣蔵院 散策マップ】
「我が横道を往く in 山梨」一覧
①【法蔵寺】延命地蔵尊とともに刻みつづける悠久の歴史
②【展望の社 差出磯大嶽山神社】時の流れを感じさせる景勝地
③【霊岩寺】山裾にひっそりと佇む本堂、その奥に残る岩窟で…
④【食事処みはらし】懐かしい雰囲気の食堂で昼食を
⑤【稲子沢】7年の月日を感じさせる景色の変化
⑥【一之橋館】懐かしい「おばあちゃんち」でのんびりとした時間を
⑦【廣蔵院】境内の奥にある巨岩に息を呑む
(お出かけ日:2025年12月14日~12月15日)
※各情報は2026年1月時点のものです。





































