今回の秩父旅行でもワタシたちは定宿の「民宿すぎの子」に泊まる気満々だった。
しかし、当日は農作業のためにお休みとの連絡が…。このとき、ワタシの脳裏に2月に泊まった「霊泉旅館 不動の湯」をはじめとした別の候補がいくつか浮かび、Kにお知らせ。
その中でKが選んだのが「上吉田民宿 かおる鉱泉」(以下、「かおる鉱泉」)だった。
見事に咲き誇る桜がお出迎え
実は「かおる鉱泉」は過去に一度、Kに勧めたことがあった。それをKは覚えていたようで、今回も候補のひとつとして挙げたところ、「ここにしようかなぁ~。評価が高い」と反応。すんなりと「かおる鉱泉」に決まった。
ちなみに、なぜワタシが「かおる鉱泉」を勧めたかというと、某旅行サイトで調べたときに「鄙びていて、ゆっくりできそう」だったから。さすがにKに勧めるので個人ブログも探して、お宿の雰囲気をある程度調べたうえで推薦した。
ただし、「かおる鉱泉」は「合角ダム」の手前、秩父31番札所「観音院」の北側という、秩父の北西部にある吉田地区に位置し、市街地からは車で30分ほどかかる。「昌福寺」からだと25分ほどだった。
この日のワタシたちは国道140号から埼玉県道37号 皆野両神荒川線に入って「かおる鉱泉」へ。途中、車がすれ違えない幅のトンネルがあったが、もともとすれ違う車もなく、のどかな道を北上。途中で埼玉県道71号 高崎神流秩父線のほうへ曲がり、あとは吉田川に沿って北西に進むとお宿があった。
【上吉田民宿 かおる鉱泉】基本情報
上吉田民宿 かおる鉱泉
■住所:埼玉県秩父市上吉田
3662
■宿泊費:
1泊2食つき 11,550円~
※税込価格 ※観光サイト調べ
■宿泊人数:30人
■温泉:鉱泉
(弱アルカリ硫黄泉)
■駐車場:あり
■電話:0494-78-0311
「かおる鉱泉」に到着したのは15時30分頃。ガラス戸を開けて「こんにちは~」と声をかけると、奥からおかみさんがやってきて、ワタシたちは小さなフロントでチェックイン。
「お宿の前の桜がきれいですねぇ」という話から、ワタシたちがどこを巡ってきたのか聞かれ、「清雲寺」や「長泉院」の話題に。さらに、近くにある31番札所「観音院」のことを伺う。
初対面にもかかわらず、当たりの柔らかいおかみさんとしばらく桜の話で盛り上がり、駐車場のそばにカタクリの花も咲いていることを教えていただいた。明日、帰るときにぜひ見てみよう。
外から「ホーホケキョ」の鳴き声がいくつも…!
「かおる鉱泉」は館内がちょっと複雑な造りになっているのが特徴だ。
フロントの横から奥に向かい、お食事処の前を抜けるとごつい階段がある。この階段を上った先にガラス戸がはまっていて、そちらから客室の並ぶ2階に入る構造になっている。
つまり、大きく分けてフロントや浴場のある建物と、客室やお食事処のある別棟(仮に前者を本館、後者を別館としておく)になっているのだ。
2階の廊下沿いに並ぶ客室は確か3室ほど。それぞれの客室は離れていて、他の客室の声は気にならなかった。
客室の前まで来たところで、案内していただいたおかみさんから客室の鍵の開閉方法を教わる。決して難しくはないが、最初のうちは開閉に戸惑うこともあったので、開け方と閉め方をしっかり聞いておこう。
また、2階の入り口でスリッパを脱ぐが、廊下には全面にマットが敷いてあるので、朝や夜でも足が冷たいと感じることはなかった。
客室はシンプルだが広々としていて、コタツやテレビ、エアコンなどの設備はしっかり揃っている。布団は自分たちで敷くのが「かおる鉱泉」のシステムだ。
ワタシたちが訪れたときは春ということで、窓の外から「ホーホケキョ」とウグイスののどかな声が。それもあちこちでウグイスが鳴いているので、思わず窓を開けて外を眺める。
もちろん、ウグイスが見つけられるわけもないのだが、何羽ものウグイスが鳴いているのを初めて聞いた。
窓を開けると眼下には吉田川が流れ、お宿が山あいにあることが一目瞭然。ときおり車が通り過ぎる音がするくらいで、心が自然と和んでくるような景色が広がっている。
ただ、Kの事前調査によると窓の外に杉があり、窓を開けっぱなしにすると花粉が入ってきてしまうのだとか。実際、窓のすぐ外に杉があったので、開けっ放しにすることはなかった。
ワタシが面白いなぁと思ったのは、お宿や周辺の案内がつづられたファイルだ。
こちらの案内によると、美肌や疲労回復などの効能がある「かおる鉱泉」は、明治時代に初代のご主人である寿吉さんが発見。卵の匂いがするということで、和みの湯を作ったのが始まりだという。
太平洋戦争が終わり、日本が復興しつつあった頃になると、二代目・福太郎さんの長男だった薫司さんが「皆の明日を温かくしてやりてぇな」との思いから民宿の立ち上げを決意。このとき、現在のご主人で四代目に当たる和久さんは東京の西洋料理店で店長を務めていたものの、薫司さんの思いに共感して和みの湯場を作ることを決め、現在に至るという。
ちなみに、屋号は鉱泉の「香り」と、薫司さんの「薫」を由来としているとのことだ。
他にも周辺の観光マップもあり、こちらを見ていると「かおる鉱泉」の先にある地域にも行きたくなってしまったが、疲れているのでさすがにやめておいた。
「たまご湯」の名前のとおり鉱泉からたまごの香りが
ひと息ついたあと、ワタシたちは卵の香りがすることから「たまご湯」と名づけられた鉱泉へ。
浴場はフロントの奥、本館の吉田川沿いにあった。
「かおる鉱泉」のたまご湯は弱アルカリ性の冷鉱泉で、泉温は18.4℃。浴槽に張られた湯はもちろん加温してある。
浴槽は3~4人入るといっぱいになりそうなこぢんまりとしたものだが、他に宿泊客がいないタイミングを見計らって入浴するワタシにとっては、このくらいのサイズで十分。
たまご湯はワタシとしてはちょっと熱めだったが熱すぎることはなく、湯船に浸かったワタシは「いい湯だねぇ」と1人で悦に入っていた。
入浴後、Kを待っている間にワタシはフロントの近くにある図書棚で気になる本をチェック。秩父の文化財をまとめた本にビビッときて、Kが浴場から出てくるまで夢中で読んでいた。
こちらの図書棚には「クレヨンしんちゃん」もあったのだが、「クレしん」を見るとどうしても仕事を思い出してしまうので、さすがに手をつけず。実はどのへんの巻にどんなエピソードがあるかもだいたい覚えているくらいで…。
Kが浴場から出てくると、「卵の匂い、わかった? けっこう匂いがしたね」と尋ねられ、ワタシはキョトンとしてしまう。そんなこと、気にもしなかった…。
夜に再度入浴した際、「鉱泉」の札がかかった蛇口から鉱泉をちょっとだけ出して匂いをかいでみると、本当に卵の香りがほんのりと漂っていた。
なお、「かおる鉱泉」では入浴時間は7時~9時40分、15時~22時になっている。
それぞれ主張しすぎず、それでいて埋没しない料理の数々
風呂から上がったあとは、いつものように部屋のテレビに持参したDVDプレーヤーをセット。ちびちびとお酒を飲みながら「ER 緊急救命室」を観る。
お宿の周辺は日が暮れてくるにつれてウグイスの鳴き声が減り、前を通る車の数も減ってきて、夕方でかなりの静けさに。
お宿のすぐそばを流れる吉田川も静かなせせらぎといった趣きで、これといった川音が聞こえてこない。「かおる鉱泉」は本当に穏やかな環境に囲まれていることを実感する。
18時30分からはお食事処で夕食。テーブルには本日のお品書きが添えられていた。
ワタシたちが席に着いたところで味噌鍋に点火。ここで揚げたての天ぷらもテーブルに並ぶ。
小鉢料理がいろいろ並んでいる印象で、「もしかしたら満腹にならないかも…」と思うかもしれない。実際、ワタシたちもそうだった。
しかし、小鉢料理や炊き込みご飯のあとで田舎そばに箸をつけるころには、けっこうな満腹状態に。量はむしろ十分すぎるくらいだった。
味については全体的に薄めの印象だったが、Kが印象的な言葉を残していたのでここに載せておこう。
「それぞれ違った味わいで、それぞれが埋没してなくておいしかった」
この表現、まさにそのとおりだと思った。ひとつひとつの料理が主張しすぎていないのに、それでもしっかりと印象を残していた。だから、「これがおいしかった!」というよりも、すべての料理がおいしかったという満足感が残る。食後に「さすがは料理店の元店長だ」と感心してしまった。
ちなみに、おそば好きのKは「特におそばがよかった」と喜んでいて、大好きなとろろを入れたとろろそばを楽しんでいた。
あと、個人的に欠かせないと思ったのが、秩父の3種類の地酒を味わえる「きき酒ペアリング」。こちらは秩父錦、白扇、武甲正宗という3種類の地酒をいただくことができる。
この中でワタシたちがよく知っているのが秩父錦で、武甲正宗は今年2月に「霊泉旅館 不動の湯」に泊まった際に初めて堪能。白扇はあとで調べたところによると、宝登山の近くにある「藤﨑摠兵衛商店」のお酒のようだ。
それぞれのお酒を口に含んでみると、味わいの違いがよくわかる。どちらかというと日本酒は甘口が好みのワタシは白扇の印象が残り、Kは武甲正宗がおいしいと話していた。ワタシの感想になるが、最もコクがあったのが秩父錦だったように思う。
実はこれらの地酒が小鉢料理とぴったり! 小鉢料理に箸を伸ばしながら「なんか違う味わいでいいねぇ」と地酒をキャッキャと楽しんでいたワタシたちの影響なのかはわからないが、隣の卓の方々もあとで「きき酒ペアリング」を注文していた。
おいしい料理とお酒をゆっくりといただくこと1時間ほど。さまざまな味わいを楽しめる夕食はまさに至福のときだった。ごちそうさまでした!
「ここでは日常を忘れ、思いっきり怠けてみて下さい」
食後はのんびりとお酒を飲みながら、持参した映画「リプレイスメント」のDVDを鑑賞。映画の内容については…最後まで2人とも集中力が続かず、途中で休憩を入れたことを記しておく。
映画が終わったあとは、浴場が閉まる22時前に再度入浴。この時間帯になると、お宿の前の県道はほとんど車が通らず、ときおり通り過ぎていく車の音がむしろよく聞こえるくらい静か。こんなに音のないところにいると、普段の自分がいかにさまざまな音に囲まれているのか、逆に気づかされた。
4月1日は7時30分頃に起床。朝食は納豆や焼き魚、目玉焼きなど、日本でよく見かける食べ慣れた料理が並び、ワタシたちは残さずいただく。
10時にチェックアウトしたワタシたちは、おかみさんに教えていただいたカタクリの花をチェック。カタクリは駐車場そばの斜面にひっそりと咲いていた。
お宿の案内の冒頭に「ここでは日常を忘れ、思いっきり怠けてみて下さい」と記されていた。「かおる鉱泉」はまさにそのとおりの過ごし方ができる、のんびりに満ちたお宿だった。Kも気に入ったようだし、また近いうちに泊まりに行きたいと思っている。
「春は秩父で桜を愛でる in 埼玉⑤【秩父札所34観音霊場 午歳総開帳の景色 仲春編】」へ
(お出かけ日:2026年3月31日~4月1日)
※各情報は2026年5月時点のものです。




















































